2014年4月13日日曜日

関節痛

 今日は関節痛についてです。腰、肩、骨粗鬆症、痛風などによる関節痛の方は3000万人いると考えられており、手足の関節痛に限っても680万人いるといわれています。この中で膠原病による関節痛は100万人いると推定されています。関節痛の原因は変形性関節症、関節リウマチ(RA)、反応性関節炎、痛風、偽痛風など多岐に及びます。この中に膠原病もあるのですが、自己免疫疾患であり、早期の診断と治療が予後を左右します。RAで70万人、SLEで5万人、Sjogren症候群で5万人などの患者が推定されています。リウマチ性多発筋痛症(PMR)も治療が容易であることを考えれば、忘れてはならない疾患です。
 多関節炎の診断は、まず問診、身体所見、検査と進めていきます。問診では、いつ頃からか、症状の持続が6週間以上に及ぶかどうかどうか、急性か、徐々に始まったか、どの関節か、複数関節に及ぶか、対称性か、消化器系や泌尿器系などの先行感染があるか、腫れの有無、朝のこわばり、レイノー症状、皮疹の有無、発熱の有無などが重要です。
 身体所見では、視診で腫脹や発赤の有無を肘、手、膝、足の関節について評価します。触診では手のひらをあてて熱感をチェックする、圧痛、腫脹の評価などです。手関節の圧痛は母指と示指で挟むとよいようです。膠原病の皮疹にかゆみを伴うことは稀ですが、強皮症(PSS)と皮膚筋炎(DM)ではかゆみを伴います。膠原病ではさまざまな皮疹が知られています。蝶形紅斑(鼻唇溝を超えない)、ヘリオトロープ、口内炎、強膜炎、円盤状紅斑、ゴットロン徴候、レイノー症状などです。
 検査では、血沈、CRP、検血、検尿、抗核抗体、リウマチ反応、抗CCP抗体、胸部や関節のX線撮影などです。未分類関節炎で抗CCP抗体陽性の場合は、RAに進展する可能性が高いことが知られています。抗核抗体は抗ヒトγグロブリン抗体で、染色パターンでhomogenous, speckled, centromere, peripheral, nucleolar, 抗ミトコンドリア抗体(抗細胞質抗体)などがありますが、あまり病的意義は変わらないと考えられており、x80以下は正常と判断します。偽痛風では軟骨にカルシウム沈着が特徴的で、胸部レントゲンでは胸水や心拡大のチェック、関節炎については関節エコーやMRIが重要です。というのも関節リウマチでは早期にX線上異常を認めないからです。Heberden結節では変形性関節症の除外ができますし、DIPには滑膜がないのでRAは生じません。
 RAと鑑別を要する疾患としてPMRでは首、肩、腰などのどちらかというと大きい関節を傷害します。RS3PE症候群や腫瘍関連症候群も忘れてはいけません。
 MRIは良い検査なのですが、1回に1関節しか検査できないところが難点です。ただ、早期に異常が出やすいこととGdにより造影されます。関節エコーではpower dopplerを使用します。
 RAの治療ですが、アスピリン、ステロイド、メソトレキセート(anchor drug)、タクロリムス、生物学的製剤(抗TNF製剤など)などがあります。

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2014年4月5日土曜日

HDLの新たな知見

 だいぶ前になるのですが、とても勉強になったのでアップしておきます。3/26に阪大の山下静也教授のお話を聞いてきました。リポ蛋白群は変性LDLになり、スカベンジャー受容体を介して泡沫細胞に取り込まれます。LDLはアポB100の修飾を受けて、酸化LDLになります。この酸化LDLには以下のようなさまざまな作用があります。
①血管作動物質の分泌、②血管平滑筋の増殖、③マクロファージの泡沫化と増殖、④内皮細胞における接着分子発現と一酸化窒素生成調節、⑤白血球遊走調節、⑥過酸化脂質の生成、リン脂質の増加
 LDLは過酸化脂質生成反応とアポBの変性により酸化LDLになることにより、本来のLDL受容体に結合するのではなく、スカベンジャー受容体への結合やCD36への結合に至ります。
 ここでHDLの形成についてみてみると、アポA-Ⅰは8割が肝で合成され、2割は小腸から吸収されます。そして、円盤状のDiscoidal HDLになり、肝のABCA1の働きでABCAになり、さらにLCATの働きでsmall HDLにになります。small HDLはLCATの働きでlarge HDLになり、CEと結合してSR-B1になることもあるのですが、大半はアポB含有リポ蛋白(VLDL, IDL, LDL)に変化して肝のLDL受容体に結合します。この辺りは複雑で、間違いがあるかもしれません。
 低HDL-C血症は単独でも動脈硬化を悪化させることが知られています。低HDL-C血症の原因として遺伝性と2次性があります。2次性低HDL-C血症の原因として、①喫煙(LCATを低下させます)、②肥満、メタボ、③運動不足、④高TG血症、⑤肝硬変末期、⑥アンドロゲン、プロゲステロン、⑦降圧薬(β-ブロッカー、サイアザイド)、⑧プロブコールなどが挙げられています。
 そもそもHDLには多彩な機能があることが知られています。
①コレステロール引き抜き能と逆転送系、②抗感染活性、③抗血栓活性、④抗酸化作用、⑤抗DM作用(ABCA1を介したインスリン分泌亢進による)、⑥抗アポトーシス活性、⑦血管内皮細胞修復、⑧血管拡張活性、⑨抗炎症作用(ICAMやVCAMなどの接着因子の促進や抑制)
 なぜこれほどまでに生理活性が多いかというと、HDLには多くの蛋白や酵素が結合しているためのようです。
 Pon1、A-Ⅰ、A-Ⅱ、LCAT、CETP、PAF-AHなどを含んだfunctional HDLが、sPLA2、SAAなども含んだdysfunctional HDLに変化することがあるようです。冠動脈疾患の患者のHDLは内皮細胞のNO産生を抑制することが知られており、これはdysfunctional HDLの例といえます。HDLの補充はNO産生を惹起して内皮機能を改善します。これはfunctional HDLの例といえます。
 また、proinflammatory HDLとantiinflammatory HDLがあり、LDLの酸化、血管の炎症、コレステロールの逆転送にそれぞれ反対に作用します。コレステロールの引き抜き能がよければ、CADのリスクは下がると考えられます。
 創薬の一つとして、CETP inhibitorがあるのですが、HDL-Cが上昇します。HDL-Cを上昇させるのは薬だけではありません。生活習慣の改善です。①有酸素運動 5-10%、②禁煙 5-10%、③1㎏の減量 0.35mg/dl/kgBW、④適量のアルコール 5-15%、⑤ω-3脂肪酸 0-5%上昇させることが知られています。薬剤では①フィブラート 5-25%、②ナイアシン 10-30%、③スタチン 3-12%、④エゼチニブ 3-7%上昇すると考えられています。
 HDL-Cは俗に善玉コレステロールと呼ばれていますが、HDL-Cが90mg/dlをこえると、心電図上虚血性変化が増えると考えられているそうです。
 フラミンガム研究でもCETPが低いと、血管病が増えることが示されています。先に述べたCEPT inhibitorの開発が行われているのですが、そのいくつかは中止に至っています。CEPT阻害によっては粥状硬化は予防できず、obese large HDL=dysfunctional HDLが増加するということです。
 私も使用しているL/H比については、CETP欠損症やCETP阻害薬でも低下しますが、これらの状態では動脈硬化を防御できず、probucol(ロレルコ、シンレスタール)ではLDL/HDL比はかなり増加しますが、強い抗動脈硬化作用があります。つまり、L/H比は意味がなく、それぞれの絶対値が重要とのことです。
 probucol(ロレルコ、シンレスタール)によって、①黄色腫が減る、②抗酸化作用がある、③LDL-Cが10%低下する、④HDL-Cは大いに低下することが知られています。私自身今までに使用経験がないような薬です。その機序は、reverse cholesterol transportが上昇して、HDL機能の改善があるようです。家族性高コレステロール血症においてprobucolがCADイベントが減少することが知られています。ある研究ではprobucolによりCAD患者の死亡率が55%も低下したことが示されています。
 probucolには①HDLをLDLに変化させるCETPが上昇してlipid poorなスリムなHDLになる、②肝でのSR-B1が増加してコレステロールが肝に取り込まれる、③抗酸化作用を認めるなどの作用が証明されているようです。

 本当に目からうろこで勉強になりました。スポンサーはスタチンの会社でしたが、自社製品に関係ないがとても重要な情報をもたらしてくれるこのような会を催してくれたアストラゼネカ/塩野義には好感を持てました。

 ついでに、4/1は家族の一部が映画に行くということで、診療後に慌ててついていきました。”永遠のゼロ”を博多駅の映画館で見ました。原作は読んでいたので、映画を見る予定はなかったのですが、映画の日でしたし、気分転換になるのかなと思って行ってきました。映画館に邦画を見に行くことはほとんどないのですが、このテーマは、日本人にしか扱えないテーマですし、ストーリーは知っていても泣ける良い作品でした。主人公は、その当時多くいたであろう誠実に生きた素晴らしい日本人の一人です。
 最近、日本人であることに誇りを感じるようになりました。若いころには感じられなかった感情です。年をとったためでしょうか・・・><!?


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